〈生き方〉千人の高校生が立ち上がった

◎人の心に灯をともす…より転載 


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☆千人の高校生が立ち上がった



諏訪中央病院名誉院長、鎌田實(みのる)氏の心に響く言葉より…



2018年7月、台風7号と梅雨前線の影響で、北海道で大雨を降らせた後、太平洋高気圧が南下し、九州、西日本に記録的な大雨を降らせました。


のちに「平成30年 7月豪雨災害」と名付けられたこの災害は、西日本に甚大な被害をもたらします。


岡山県総社(そうじゃ)市と倉敷市真備(まぴ)町では多い時で7000人以上が避難する事態になりました。


当時、総社高校の1年生だった光旗郁海(こうばたいくみ)さんは、一部の地域に避難勧告が発令されるなか、市街の中心部にある親戚の家に避難。


やむ気配のない大雨に、恐怖を抱いたといいます。


一夜を明かし、翌朝無事に自宅に戻ってきて、被害の様子を報じるテレビニュース を見た光旗さんは、えっ、と自分の目を疑いました。


テレビに映し出されていたのは、自分の住む総社市のことだったからです。


高梁(たかはし)川の水位が上がり、道路や田畑が浸水、濁った水がよく知っているはずの風景を覆いつくしていました。


そのうえ、浸水した アルミ工場が爆発し、炉で溶かされたアルミニウムが飛び散って、近隣の住宅で火災 が発生するという大惨事も発生しました。


「ふだんテレビのなかのことは他人事だと思っていたんですが、よく知っている自分たちの地域のことがテレビのなかで報じられていて、今、私たちが当事者になっていると初めて気づきました」

他人事から当事者へ。


この視点の転換がとても大切なところです。


相手の身になっ たとき、相手が抱える問題を自分の問題として考えることができるかどうかも、この視点の転換です。


高校のクラスのLINEを開くと、友人たちが続々と近況を送ってきました。


「高梁(たかはし)川がヤバイらしい」「昨夜の工場の爆発はすごかったみたい」興奮ぎみに送信してくる友人たち。


細かい状況はわからないけど、とにかく無事であることにひとまずほっとしました。


しかし、2人の友人からなかなか返信がありません。


浸水の被害が深刻な真備町に住む友人と、アルミ工場のすぐ近くに住む友人でした。


「これは大変なことが起きているんじゃないか?」


友人たちの身になって考えると、「今すぐにできることはないか」という思いが強 くなっていきました。


それぞれがお互いの様子を確認しあうなかで、勇気を出して行動を起こしたのが、光旗さんだったのです。


光旗さんは、大雨特別警報が解除されたばかりの7月7日午後4時ごろ、総社市の 片岡聡一市長に次のようなダイレクトメールを送りました。


『片岡さん突然失礼します。これをみる暇はないかもしれませんけど......。 

私たち高校生に何かできることはありませんか? 配給の手伝いなどはできません か? 


何かできるかもしれないのに家で待機しているだけというのはとてもつらいで す。子どもだから、できることは少ないかもしれないです。


でも、ほんの少しでもで きることはないですか?』


市長からすぐに返事がありました。


『あるとも。すぐに総社市役所に来て手伝ってほしい』


「その返事にこたえて、光旗さんは近くに住む友人やツイッターで呼びかけた高校生と共に市役所に駆けつけました。


集まった高校生は約50人。


すぐに市長から指示されて、避難所でパンやお弁当を配る手伝いをしました。


「まさか市長さんがこんなに早く返事をくれるとは思っていなかったので、びっくり しました。


いちばんうれしかったのは、私たち高校生を信用してくれた、ということ。


被災している人だけでなくて、被災していない人のことも考えていただいたんだと思いました」


一方、メールを受け取った片岡市長は、『すぐ市役所に来てください』と返信したものの、特別にプランがあったわけではありませんでした。


ところが、知らぬところでこの返信が拡散され、高校生たちの行動を引き出します。


市役所に50人の高校生が「総社市を何とか助けたい」と駆けつけてきたとき、「一筋の光」を見たと市長は語っています。


翌7月8日、片岡市長の想像を超える"事件" が起こりました。


早朝6時、市長は、 市庁舎2階の災害対策本部から市庁舎前広場を見下ろすと、黒山の人だかりができているのを見て、愕然としました。


「ついに暴動が起きてしまったか」

災害の責任問題や保証について、詰め寄る市民たちが押し寄せたと思ったのです。


とにかく彼らと対話しなければ、と覚悟を決めて広場へと降りていくと、そこに集まっていたのは高校生たちでした。


「何か手伝わせてください」 「総社市を助けたいんです」前日のメールを、ある男子高校生が拡散し、約700人の総社高校、総社南高校、さらに市外からの高校生も集まっていたのです。


片岡市長は、このときの心情をこんなふうに語っています。


「彼らの心意気に泣けた。この子たちを抱きしめたいと思った......」


ここから、総社市の復興は始まりました。


総社市はバスを20台チャーターし、高校生たちは被災地域へ入りました。


市長も一緒に現場に赴くと、市長に気づいた市民か ら罵声が飛んできました。


「どうしてくれる、こんなになってしまって」 「国道をかさ上げしてくれと言ったのに」 「もうこんなとこには住めん」


高校生たちは、そうした罵声を浴びせかけてきた人の家にも、何の迷いもなく入り、泥かきに汗を流しました。


泥水を吸った畳を6人でようやく持ち上げては運び出し、 泥にまみれたタンスも救出しました。


泥の中から思い出のアルバムをかき出した高校生もいました。


高校生ボランティアは、次の日も次の日も集まりました。


最初の4日間だけで1700人以上が集まったといわれています。


「何かのきっかけさえあれば、多くの人が行動を起こしてくれる。


“誰かのために何 かをしたい"という人が、こんなにもたくさんいるなんて」


一通のメールできっかけをつくった光旗さんは、驚きとともに責任のようなものさえ感じたといいます。


災害対策で奔走する市役所の方たちに、余計な負担をかけたのではないか、と。

水害の後、気温は連日30度以上。


7月の厳しい日差しと高い湿度のなか、市役所の 玄関に集まり、バスで現場に入り、泥かきに明け暮れました。


熱中症の危険もあるなかでの作業でした。


そのときの市長のツイッターです。

『総社市復興に千人の高校生が立ち上がったこと。凄いこと。


彼らに総社市の未来を託せる』 『高校生ボランティアチームの泥んこの頑張りによって、こうして被災地の瓦礫が整理されました。


地域の方々は感激しています。泥んこを洗濯してくださるご家族の方、申し訳ございません。


でも、本当にありがとうございます』


夏休みになると、こうした高校生たちの姿を見た中学生や小学生が、次第に支援の 輪に加わり始めました。


子どもたちが頼もしく変わっていくなかで、大人たちにも変化が起こり始めました。


「どうしてくれるんだ」と罵声を浴びせていた住民たちが、「ありがとう」と感謝の言葉を口にするように変わっていったのです。


『相手の身になる練習 (小学館Youth Books)』

相手の身になる練習 (小学館Youth Books)


「近頃の若い者は」という言葉は、ギリシャの哲学者プラトンの書にもあるし、エジプトのピラミッドの遺跡にも書かれているそうだ。


現在でもそうだが、年寄りは、いつの時代でも、若者を「礼儀や挨拶ができない」「本も読まないし勉強もしないでゲームやマンガばかり」「やる気がない」と「まったく、なってない」とこき下ろす。


しかし、どの時代であろうと、これからの未来を作っていくのは若者たちだ。


老人が未来を切り拓く、などということは古今聞いたこともない。


確かに、「何か社会の役に立ちたい」と社会参加したと思っている日本の若者は、アメリカ52.9%、ドイツ52.6%、イギリス45%と比べて、ダントツに低く、30.2%しかいない、ということも事実だ。(平成29年の内閣府の調査より)


選挙や政治への関心も薄く、「世のため、人のため」という人を思いやる気持ちが欠けている、とも言われている。


そして、自分の将来に明るい希望を持つ割合も、アメリカ91.1%、スウェーデン90.8%、イギリス89.8%と比べて、61.6%しかない。


つまり、一見すると「しらけている」「熱くならない」「行動しない」とみられてしまう。


しかし、この総社市の高校生のように、何かのきっかけさえあれば、若者たちのエネルギーは爆発する。


若者たちこそ、心に熱いものを持っているのだ。


若者を信じ、若者たちにこの国の未来を託したい。


相手の身になる練習 (小学館Youth Books)


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