〈生き方〉相田みつを【のに】



【のに】


あんなに世話を

してやったのに

ろくなあいさつもない


あんなに親切に

してあげたのに

あんなに一生懸命

つくしたのに

のに……

のに……

のに……


〈のに〉が出たときはぐち

こっちに〈のに〉がつくと

向こうは

「恩に着せやがってー」

と思う


庭の水仙が咲き始めました

水仙は人に見せようと思って

咲くわけじゃないんだなぁ

ただ咲くだけ

ただひたすら……


人が見ようが見まいが

そんなことおかまいなし

ただ いのちいっぱいに

自分の花を咲かすだけ

自分の花を……


花は ただ咲くんです

それをとやかく言うのは人間

ただ ただ ただ……

それで全部

それでおしまい

それっきり


人間のように

〈のに〉なんてぐちは

ひとつも 言わない

だから 純粋で

美しいんです。



◎ある日自分へ(70ページ)

相田みつを著