〈生き方〉寅さんが使う啖呵売の口上集

寅さんが使う啖呵売での口上のセリフ全文(音声付)をまとめてみた | 男はつらいよ


★寅さんが使う啖呵売の口上集


物の始まりが1ならば、国の始まりが大和の国、島の始まりが淡路島。


泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、博打打ちの始まりが熊坂の長範。


はじめばかりでは話にならない、続いた数字が二。


兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ、仁吉が通る東海道、憎まれ小僧が世に憚る。


仁木の弾正はお芝居の上での憎まれ役。


続いた数字が三つ。


どう?曲がったこの本、ね?

三、三、六歩で引け目がない、産で死んだが三島のおせん。


おせんばかりがおなごじゃないよ。

京都は極楽寺坂の門前で、かの小野小町が三日三晩飲まず食わずに野垂れ死んだのが三十三。


とかく三という数字は、あやが悪い。


続いて負けちゃおう。


この黒い本。


色が黒いか黒いが色か、色が黒くて食いつきたいが、わたしゃ入れ歯で歯が立たない。


色は黒いが味見ておくれ、味は大和の吊るし柿。


色が黒くて貰い手なけりゃ、山のカラスは後家ばかり。


続いた数字が四つ。


四谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れる御茶ノ水、粋な姉ちゃん立ちしょんべん。


白く咲いたが”ゆり”の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い。


一度変われば二度変わる、三度変われば四度変わる。


ね?淀の川瀬の水車、誰(たれ)を待つやらクルクルと。


続いた数字が五つ。


ごほん、ごほんと波さんが磯の浜辺で「ねぇあなた」。


昔武士の位を禄(ろく)<六>と言う。


かの後藤又兵衛が槍一本で六万石。

ロクでもない子供ができちゃいけないというので、教育修行の一環としてお父さん、買って頂きましょう、この絵本。


どうです?ね?真っ赤な表紙。


赤い赤いは何見て分る、赤いもの見て迷わぬものは、木仏金仏石仏。


千里旅する汽車でさえ、赤い旗見てちょっと止まると言うやつ。


七つ長野善光寺、八つ谷中の奥寺で手鍋さげてもわたしゃいとやせぬ。


あなた百までわしゃ九十九まで、共にシラミのたかるまで。


さぁー買い手がなかったら、わたくしこれで家業三年の患いと思って諦めます。


浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)じゃないが腹切ったつもりで負けましょう。


ね?これで買い手がなかったら、右に行って上野、左に行って御徒町、西と東の泣き別れというやつ。


ね?角は一流デパート赤木屋黒木屋白木屋さんで、

紅白粉(べにおしろい)付けたお姉ちゃんに下さい頂戴で願いますと、


六百が七百くだらない品物だが、今日はそれだけ下さいとは言わない。


どう?


タダでやっては義理が悪い。

ね?はい、僅かの二百だ!!


これで買い手がなかったら、しょうがない。


今日はこじきの行列だ!

ほら、持ってけこじき野郎!!