〈生き方〉仕事術…お店を徹底的に掃除する (松浦弥太郎)

◎いいため話…より転載  


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●仕事術…お店を徹底的に掃除する


(松浦弥太郎)



僕が経営する古書店カウブックスの大切な仕事は掃除です。




6年前に開店した時から、スタッフにはことあるごとに「見えないところをきれいにしよう」と言い続けています。


30分あればひととおりの掃除はできるようなスペースを、毎日2時間かけて掃除する。


これをばかばかしいと思う人もいるようです。


毎日掃除しているのですから、磨く場所が見つからないほどきれいなのです。


ほとんどのスタッフが、「毎朝、無意味なことをやらされている」と感じているようでした。


ところが、そのなかの数人は楽しそうに掃除をするということに、僕はやがて気づきました。


その一人にたずねてみると、こんな言葉が返ってきました。


毎日やると決めたのだから、「大変だ」とか「なんの意味があるんだろう」などと考えず、楽しんで掃除をしようと決めた。


すると、毎日磨いている積み重ねが自信になって、お客さまに胸を張って「いらっしゃいませ」と言えるようになった…。


彼らの答えを聞いたとき、秀でた人かそうでないかは、与えられた仕事を楽しめるかどうかの違いなんだな、と感じました。


僕が掃除を徹底している理由も、彼らの答えと似ています。


カウブックスというこれまでなかった古書店を始めるとき、経営や接客のすべてが手探りで、自信をもてるところが何一つありませんでした。


そこで僕は、自分たちが今いる場所を大切にしていれば、ささやかでも確実な自信になると思ったのです。


「すみずみまで毎日掃除している」という努力の事実があれば、小さくても誇れるものができると。


それは今でも続いており、『暮しの手帖』でも僕は同じことをしています。


一生懸命に磨き、整理整頓し、毎日掃除を続ける。


これを守っていれば、ごくたまに小さな埃が見つかるとしても、よくある失敗ですみます。


「ええっ、その棚は見られたくないな」という部分がまるでないだけで、堂々と振る舞えます。


毎朝の掃除で、きよらかさをつくりだせば、誰でも強くなれるのです。


「きれいなところを、もっときれいにすることは、一つの創造です」


引用:松浦弥太郎 著

『今日もていねいに。』PHP文庫