〈認知症〉 認知症の母に、息子が「毎日足のマッサージ」をしてみたら… 「認知症の母を支えて」103歳を元気に迎えるまで

◎幻冬舎 GOLD ONLINE…より転載


https://gentosha-go.com/articles/-/28641



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●認知症の母に、息子が「毎日足のマッサージ」をしてみたら…

「認知症の母を支えて」103歳を元気に迎えるまで




認知症は「誰もがなりうる病気」です。石塚武美氏は書籍『認知症の母を支えて 103歳を元気に迎えるまでの工夫』(幻冬舎MC)にて、実母への介護経験を基に、症状改善に効果的な工夫や、老々介護に必要な心構えについて述べている。




認知症ケアに有効だったのは、一体どんなこと?

一番有効であったのは、マッサージだと思います。マッサージをすることにより、栄養あるフレッシュな血液を体全体に巡らすことができたと思います。この血液が体全体の細胞の栄養となって細胞を生き生きとさせたと思います。


【1】認知症ケアに、一番効果的だったのは「マッサージ」


【2】次に大切と思われた工夫は、食べものをかむ力および飲み込む力の維持のための、歌とおしゃべりです。


歌は毎日10曲程度一緒に歌いました。ほぼ必ず歌った歌は、ふじの山、七つの子、早起き時計、キューピーさん、ないしょ話、月の沙漠、旅の夜風(映画、愛染かつらの主題歌)でした。また、毎日おしゃべりを3時間以上しました。とにかく口を動かすことは重要です。


誤嚥の予防にもなると思います。誤嚥は肺炎になる心配があります。



お年寄りの食器やコップについては、つい、割れにくく軽いプラスチックのものを考えてしまいますが、重要なのは気持ちよく食べてもらうことです。一般に年とともに食が細くなりますので、しっかり食べてもらうためには、食器のデザインや絵が素敵なことと、思わず食べたくなるような食べものの盛り方が大切と思いました。



例えば天ぷらは、色、形が違う数種類(黄色のカボチャ、緑のピーマン、白っぽい魚など)。天つゆのお皿を別に用意して、大根おろしもたっぷりと。また、エビは尻尾を持ち上げて小ぶりでも3匹にするとか、アユの塩焼きは大皿で竹串に刺して焼けた塩が目立つようにするとかです。



また、お刺身は、小皿に醤油を入れ、小皿の端にはワサビを置きました。母親は、まず、お箸で器用にワサビをつかんで醤油に入れ、かき回します。次は、お刺身をつかんで醤油につけて口に持っていきます。時には、「マー辛い!」と驚きましたが、味覚がちゃんとしていること、お箸を器用に使っていることを見て嬉しく思いました。



母親はウサギ年生まれでしたのでお皿にはウサギの絵、コップには好きなネコや犬の絵が描かれているものを選びました。食べながら絵も楽しい話題にできます。ご飯用のお茶碗、みそ汁用のお椀も、プラスチックよりは重いですが瀬戸もの、漆塗りを使いました。慎重に扱おうとする気持ちになるのと、手首の力の維持のためです。



水やお茶を飲むコップは102歳のころまではごく普通のものを使っていましたが、徐々にコップがつかみにくくなってきたので取っ手のあるコップに替えました。この取っ手のデザインが極めて重要でした。



通常は親指を取っ手の中に入れるか、親指とほかの指で挟んで飲みました。取っ手が大きすぎるとつかみにくいし、取っ手が小さいか、複雑なデザインだと、親指が入りにくく、入っても時には抜けなくなることもありました。もちろん取っ手が滑りやすいものもつかみにくく不便です。何回か取っ手が合わず落として割ったことがありました。



◇認知症の母へ、どんな「マッサージ」をしていたのか



マッサージは、脛の表と裏(ふくらはぎ側)を、くるぶしあたりから膝の方へ向かって、手の平でゆっくりなでることでした。ふくらはぎ側は少し力を入れました。毎日、夕方、

表と裏をそれぞれ30回程度ゆっくりとなでました。なでる前後で血圧は10~20下がりました。



私の手の力により、重力で足(指、足首、脛)にたまった古い血液が心臓に戻されるので、心臓の負担が楽になり血圧が下がったのだと思います。もちろん気持ちがいいので幸せに感じて下がった面もあると思います。毎日続けた結果90歳少し前から飲んでいた血圧の薬もいつの間にか不要になりました。



同じように血圧を下げる効果があったのは、電池で動いてしゃべるネコと犬のおもちゃです。抱っこして、頭や背中をなでて嬉しそうにかわいがりました。特に、ネコの「にゃー」や犬の「クンクン」と鳴く声が聞こえると喜びました。このようにネコや犬と遊んでニコニコして、リラックスして血圧が下がったのだと思います。


水虫の解消が「認知症ケア」に繋がった!?

母親は60歳ころから両足の指に水虫がありました。いつも指の間がべたついていて痒がっていました。いろいろな薬を試しましたがうまくいきませんでした。手で触ると私の指にも水虫ができるのではと思うと、どうしたらいいのか迷っていました。



でも、じくじくしているのが気になり、あるとき、綿棒で指の間の湿っているところをこすってみました。何となく湿ったところが少し綺麗になった様子なので、左右5本の指の間8カ所を毎日新しい綿棒でそっとこすり綺麗にするようにしました。水分を取り除い

て乾燥させるようにしたのです。



5年ほど毎日続けたでしょうか、気がついてみると水虫は消え指の間はとても綺麗な皮膚になっていました。その後も毎日綿棒で指の間を綺麗にしました。時にはくすぐったいと笑いましたが、指の間の柔らかい皮膚を綿棒で刺激することは脳にもいい刺激となって認知症がよくなった要因の一つになったと思っています。



※本記事は、連載『認知症の母を支えて 103歳を元気に迎えるまでの工夫』を再構築したものです。




石塚 武美